ランニング初心者の多くの方が経験するケガですが、その原因は故障です。ぶつかったり転倒による外傷と異なり、故障は使いすぎによるものなので、走り方を改善して足への負担を減らし、ケアをすることで防ぐことができます。そこで、今回はケアの仕方についてお伝えしようと思います。
ケアする際に重要なことは何だと思いますか?
それは、筋肉の柔軟性を高めるということです。ランニング初心者の方に多いひざのケガの原因は、ひざ周辺の靭帯の摩擦による炎症です。太ももの外側の筋肉が疲労によって硬くなると靭帯が緊張状態となり、摩擦がより起きやすくなります。摩擦を少なくすることで負担を減らすことができ、痛みやケガの予防に繋がります。そのためには筋肉を柔らかい状態で保つことが大切になります。
筋肉の柔軟性を高めるケアの仕方として、「伸ばす」「さする」「揺らす」「捻る」「冷やす」の5つの観点でお伝えします。
ランニング初心者がケガをせずにランニングを続けるためのケアの仕方
伸ばす
筋肉を伸ばすストレッチですが、実施するタイミングで効果が異なります。
ランニング前は弱めで10秒以内に終わるようにします。ランニング前の筋肉は冷えているので硬い状態です。この状態で強い力で伸ばすと筋肉を痛める原因となります。また、長い時間伸ばしていると筋肉が伸び切ってしまいます。筋肉はある程度の弾力があることで力を発揮します。伸びきってしまうとその弾力がなくなりランニングパフォーマンスが低下してしまいます。
ランニング後は気持ちいい程度で25秒~30秒伸ばすようにします。ランニング後は筋肉は温まっていて伸ばしやすいのですが、緊張状態にあります。25秒以上伸ばし続けることで、運動が終わったと脳が判断し、筋肉の緊張を解きます。そのため、伸ばし始めたらしっかり25秒以上伸ばす必要があります。
また、ランニング後は乳酸が溜まっています。乳酸はエネルギー源であり疲労物質ではないのですが、筋肉を硬くする特性があります。そのため、ランニング後は素早く乳酸を除去することが必要になります。筋肉を伸ばすことで血管も伸ばされます。血管の伸縮により血流が良くなり乳酸も一緒に除去されます。また、ランニング後は筋肉が温まっている状態のため、伸ばしやすい状況になっているため柔軟性と可動域の向上に繋がります。
間違ったタイミングで実施をすると逆に筋肉・腱・靭帯を痛める原因にもなるので注意が必要です。
さする
全身をめぐっているものとして血管とリンパ管があります。血管は心臓→動脈→静脈→心臓という流れで循環していますが、リンパ管は循環機能が無く、筋肉や内臓の伸縮や圧迫による刺激でのみ流れています。そのため、流れが悪くなりがちです。リンパ管の役割は、細菌や老廃物や疲労物質を排出することです。そのため、リンパの流れが滞ると、免疫機能や疲労回復機能が低下します。
リンパの流れをよくするためには、さすることが効果的です。さする箇所としては、首、鎖骨、わきの下(前側・後ろ側)、肋骨、鼠径部、膝裏、足首です。難しく考えずに全身のリンパをさすって流す感じで行えばOKです。強くさすると流れないので弱い力でさすります。
リンパだけでなく血液の流れも良くなり、ストレッチ以上の疲労物質除去効果があります。
揺らす
ランニング前に筋肉を揺らすと筋肉同士が擦れて摩擦により温まります。筋肉が温まることで柔軟性がうまれます。
ランニング後に筋肉を揺らすと筋肉の緊張を緩めることができます。また、さする効果と同様に、血液とリンパの流れを良くし疲労回復機能を高めることができます。
揺らしながらさすると、ランニング前はより温まりますし、ランニング後は疲労回復効果も高まりますので効果的です。
捻る
ランニング後は筋肉が緊張状態にあります。緊張状態にある筋肉を直接伸ばしたり、さすったり、揺らしたりしてアプローチすることも効果的ですが、直接アプローチできない深層部分などは捻るとアプローチしやすくなります。
リンパ同様にあまり難しく考えなくて大丈夫です。足の付け根から外旋・内旋して捻ったり、肩入れ、体軸捻りなどでOKです。私がよく実施している動きは「卍ストレッチ」です。
卍ストレッチ
【ポイント】
両肩が床に着くようにする。その際両足は浮かないようにする。
腰のストレッチではなく、上半身がストレッチされていることを意識する
【効果】
インナーマッスルの柔軟性が増し、姿勢維持が持続できるようになる
力強くグイグイと捻るのではなく、捻ったら力を抜いてゆるみを感じましょう。雑巾を弱い力で絞っているようなイメージです。かる~く捻った状態で30秒くらいキープして気持ちよさを感じることで副交感神経も優位になりリラックスモードに入ります。
冷やす
ランニング後に冷水などで冷やす、アイシングを行うことで疲労回復を早めることができます。オススメする方法は、シャワーで30秒冷やす方法です。冷やした後は軽くお湯で表面を温めましょう。
ランニング後は、靭帯や腱は摩擦により炎症を起こしています。炎症というのは、カラダの組織が損傷した際に、損傷した組織を排出して新しい組織を構築するための反応です。炎症は自然治癒に必要な反応なので、何でもすぐに冷やすというのは良くありません。しかし、ランニング後の炎症はそれとは少し異なります。そのため、ランニング後の炎症は冷やして抑える必要があります。そのままにしておくと過剰に炎症反応が起き、痛みなどが出てくるためです。
疲労物質の除去の観点でも冷やすことは効果的です。冷やすことで血管が収縮し一時的には血流が悪くなりますが、元の体温に戻そうという働きにより血流が良くなります。この特性により疲労物質を素早く除去することができるのです。
冷やす際の注意点は、冷やしすぎないことです。シャワーで30秒程度にしましょう。というのは、冷え切ってしまうと血流が悪くなってしまうためです。
まとめ
ランニングによるケガの多くを占める故障を防ぐためのケアの仕方についてお伝えしてきました。私自身、かかとの痛みにより歩くのもままならない状態になりました。その際に走り方を見直すとともにケアの大切さを実感し、この方法を守ることでランニングを楽しく続けることができています。
まとめると
ランニング前
◆揺らしたりさすったりして筋肉を温める
◆10秒以内のストレッチで筋肉に軽く刺激を入れる
◆10秒程度捻ることで筋肉の緊張を緩める
ランニング後
◆25秒~30秒のストレッチで筋肉の緊張を取り除く
◆揺らしたりさすったりしてリンパの流れを良くする
◆シャワーで30秒程度冷やして、炎症を抑え、血流を良くする
◆25秒~30秒捻ることで筋肉の緊張を取り除き、副交感神経を優位にする
タイミングによりやり方が多少異なりますが、共通していることは強い力でやりすぎないことです。強い力で行うと筋肉切れないようにする防衛反応により逆に収縮してしまうためです。また、筋肉が伸びないため腱や靭帯が無理に伸ばされたりすることで損傷してしまいます。
はじめのうちは何もしなくても回復が追い付くのですが、走る距離が長くなったり、ペースが速くなったりすることで足への負担が増えるので回復が追い付かなくなり、ケガをしてしまいます。セルフケアをしっかりと行って、故障を防ぎケガをせずランニングを楽しく続けていきましょう。
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古畑 健太